脂肪酸
EPAとDHA
AAFCO2016では、犬・猫ともに、EPA・DHAの基準量は設定されていません。
必要であるだろうとしつつも、数値を決めるだけのデータがないためだそうです。
何かしらの目安になるものが欲しいので、NRC2006の基準について触れておきます。
犬の場合、1000kcalあたりEPA+DHAの最小値は110mgで、EPA:DHA=1:1〜1.5:1にするべきとなっており、最大値は1000kcalあたり2800mgです。
猫の場合、1000kcalあたりDHAの最小値は25mgで、 EPAの量が、EPA+DHAの合計の20%を超えないよう推奨されています。
魚油のサプリメントを使う際の参考になさってください。
上記の量・バランスは、EPA・DHAサプリメントのEPA・DHAバランスではなくて、食事全体のバランスです。
α リノレン酸は、体内でEPAとDHAに変換されますが、ほとんどの場合には、すべてのα リノレン酸をEPAとDHAに変換できません。特に猫では、変換するための酵素がないので、魚油から摂る必要があります。
推奨量のEPAとDHAを「魚」で摂ろうとすると、たぶんレシピのバランスが崩れます。
EPA・DHAのサプリメントをお使いになった方がいいと思います。
魚油から作られるサプリメントですから、海の汚染が気になるところです。鉛などの重金属や、PCB、ダイオキシンなどが除去されていると明記されているものを選びたいです。
EPA・DHAのサプリメントを使う場合も、「サプリメント」シートに成分を入力します。
n-3、n-6の欄の入力も忘れずに。
サプリメントの選び方や購入先は、こちらをご覧ください。
あれこれ「サプリメントの購入先」

リノール酸、α リノレン酸、アラキドン酸
この3つの脂肪酸は、動物に必要な必須不飽和脂肪酸です。
犬は、リノール酸からアラキドン酸を生成します。
NRC(2006)では、犬の場合、リノール酸:α リノレン酸=2.6 : 1〜26 : 1を推奨しています。
α リノレン酸の上限量は、摂取したリノール酸の1/2.6となります。

「猫は、アラキドン酸を食事から摂る必要があります。」今まで私が見たどの本にも、こう書いてありました。
NRC2006の説明では、「成猫は、十分なアラキドン酸をリノール酸から変換することができるが、すべての成猫が十分なアラキドン酸合成能力を持っているかどうかわからないので、この推奨量を設定した(1984,1999のデータより)。食事中のEPA・DHAの量が多い場合には、アラキドン酸を与える必要がある」とありました。・・・目からうろこ です。猫も、リノール酸からアラキドン酸を生成できると書いてあります。
アラキドン酸の多い食品上位15個には魚が多いですが、肉の脂にも多く含まれているので、たぶん基準量を摂れなくて悩むことはないと思います。

n-6 : n-3
本村先生の「アレルギーと皮膚疾患」によると、昔は、5〜10:1の間にするのが良いといわれていたそうですが、最近の研究では、4(n-6):1(n-3) が理想的だといわれているそうです。
この比率は、オイルの種類を変えることで調節できます。
どのオイルも脂質100%ですし、カロリーも変わらないので、レシピを作る時は、どれか一つのオイルを使ってまず量を決めます。
レシピが出来上がってから、決まったオイルの量の中で、何種類かのオイルの組み合わせを考えます。
たとえば、オリーブオイル20gで脂質のパーセントがちょうどよくなったら、後で、オリーブオイル12g+なたね油8g とか、あるいは半々の方がいいのか、とn-6:n-3の比率を調整します。
脂肪酸の構造
脂質はおもに3種類の元素(水素、酸素、炭素)からできていて、一定のルールでつながっています。
水素は1本、酸素は2本、炭素は4本の手を持っています。
脂肪酸の骨格になる「炭素鎖」は、炭素がまず、2本の手を使って並んでいて(人間が手をつないで並ぶように)、残った2本の手で水素とつながっています。

炭素には4本の手があるので、隣り合った炭素と2本ずつ手をつなぐこともできます。
これを「炭素の二重結合」といいます。

この行列の先頭と後尾に、「カルボキシル基」と「メチル基」をつなげば、脂肪酸の基本形ができあがります。
エイコサペンタエン酸(EPA)の例でみてみましょう。

脂肪酸には、それぞれ数字で○○:△と書いてありますね。
この○○というのが、C(炭素)の数を表します。エイコサペンタエン酸(EPA)の場合は20個ですね。
△は「炭素の二重結合」の数を表します。エイコサペンタエン酸(EPA)の場合は5個ですね。
エイコサペンタエン酸(EPA)は、20:5 となります。
また、2重結合の位置によっても性質が違ってきます。そこで考えられたのが「オメガ命名法」というルールです。メチル基側から、炭素に「オメガ1」「オメガ2」「オメガ3」・・・と番号をふっていく方法です。
エイコサペンタエン酸(EPA)は、メチル基側から数えて3つめのC(炭素)で最初の2重結合がありますから、オメガ3系(n-3系)の脂肪酸です。
★飽和脂肪酸
炭素の二重結合が、一つもない脂肪酸のことです。
○○:△の△が0となっています。たとえば、ステアリン酸 18:0
★一価(単価)不飽和脂肪酸
炭素の二重結合が1箇所しかないものが一価(単価)不飽和脂肪酸です。
○○:△の△が1となっています。たとえば、オレイン酸 18:1
★多価不飽和(多不飽和)脂肪酸
炭素の二重結合が2箇所以上ある脂肪酸のことです。
○○:△の△が2以上のものです。
エイコサペンタエン酸(EPA)は、2重結合が5つですから多価不飽和脂肪酸ですね。
リノール酸は、18:2 炭素の数が18個、2重結合が2個、メチル基側から数えて6めのC(炭素)位置に最初の二重結合があるので、オメガ6系(n-6系)の脂肪酸です。
脂肪酸の特徴
脂肪はこの3種類の脂肪酸でできていて、脂肪によって脂肪酸の割合が違っています。
飽和脂肪は動物性の脂肪、不飽和脂肪は植物性の脂肪とよく言われますが、動物の脂肪が100%飽和脂肪からできているわけではないし、植物性脂肪も不飽和脂肪だけということはないんですね。
動物性の脂肪も、植物性の脂肪も、飽和、不飽和の脂肪酸を数種類ミックスして含んでいます。
ただ、その比率が動物の肉では飽和脂肪、植物油では一般にオメガ6系列(ほとんどリノール酸)、魚介類ではオメガ3系列が高くなっているという特徴があります。
こうした脂肪酸のバランスの違いが、動物や植物の油脂に異なる性格を与えています。
たとえば、霜降り肉の脂肪は室温でも白く固まっていて、熱を通さないと溶けません。
植物油は冷蔵庫にしまっても固まるものと、固まらないものがあります。
魚の脂は、冷たい海の中でも固まりません。
これは、脂肪酸のタイプによって、「融点」つまり溶ける温度が違うためなんですね。2重結合が多いほど低い温度でも溶けやすくなるので、多価不飽和脂肪酸の多い植物油や魚の脂は固まりにくいです。
摂氏37度の人間のからだの中では、すべての不飽和脂肪酸は液体になります。
飽和脂肪酸は、炭素鎖が10までの短いタイプなら(脂肪酸組成表の○○:△で、○○が10以下という意味でしたね)溶けていますが、12以上のタイプは固形になります。炭素が12以上の長い脂肪酸を摂りすぎている人は、細胞や組織の中、血管の壁などに脂肪がこびりつきやすくなると考えられています。自分の体の中まで霜降りになってしまうんですねえ。
私の経験では、オリーブ油は冷蔵庫に入れると徐々に固まってきます。これは、多価不飽和脂肪酸が少なく、一価不飽和脂肪酸が多いせいだったんですね。
なたね油は冷蔵庫に入れても固まらないのは、オリーブ油より多価不飽和脂肪酸が多いためなんでしょう。
どのオイルを使うべきか


アンドルー・ワイルは、「ナチュラルメディスン(1999年)」の中で、多価不飽和のオイルの使用は最小限にとどめるよう書いています。熱を加えると非常に酸化しやすくなり、体によくないからです。
かつては体に害も益もないと考えられていた一価不飽和脂肪酸が、もっとも安全な脂肪である としています。
【オリーブ油】
油の中ではいちばん一価不飽和が強い。一番絞りか二番絞りなら加熱してもよい。
【ゴマ油、ヒマワリ油、コーン油】
不飽和が非常に強い。適量を使い、加熱しないこと。
【サフラワー油】
不飽和が強すぎる。使わないこと。
オレイン酸を摂りたいなら、「高オレイン酸サフラワー油」よりもオリーブ油の方が良い。味も良いし、食用油としての歴史も長い。
【大豆油】
安価。組成はコーン油と同じで、ほとんどが多価不飽和。適量を使い、加熱しないこと。
【キャノーラ油(なたね油)】
おおむね一価不飽和。いちばん飽和性が少ない(オリーブ油の半分以下)。万能。香りはない。
【綿実油】
飽和脂肪としても一価不飽和脂肪としても中途半端。綿は食品には適さない。他の油よりも農薬の残留が多い。使わないこと。
【ヤシ油、ヤシ仁油、ココナッツ油】
飽和脂肪が強すぎる。使わないこと。
【ピーナツ油】
一価不飽和から多価不飽和までの配合比率はすぐれているが、オリーブ油やキャノーラ油よりは飽和脂肪が多い。
炎症状態がある人は避けること。それ以外の人は適量ならさしつかえない。
★上の表の【n-6:n-3比】も参考に。なたね油、優秀。ココナッツオイルは最近、人気ですね。
油についての考え方も変わってきているようで、最新の情報を研究してね。
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