「小動物の臨床栄養学」より
■ 治 療
・ 未だに、犬のシュウ酸カルシウム尿石は溶解できない。物理的方法が、唯一、臨床的に活動的なシュウ酸カルシウム尿石を除去する有効な方法である。
・ 外科手術は、尿路からシュウ酸カルシウム尿石を除去する古くからの優れた方法である。しかし、これらの結石は小さく、不ぞろいなために、目に見える全てのシュウ酸カルシウム尿石を外科的に除去することが困難なことがある。
■ 予 防
・ 尿中のシュウ酸濃度とカルシウム濃度の上昇が、シュウ酸カルシウム結晶の形成を促進する。
■ たんぱく質
・ 大量の動物性たんぱく質は、尿中のカルシウム排泄を増やし、シュウ酸カルシウム尿石症を助長する可能性がある。
■ カルシウム
・ 食事中のカルシウムを減らすときは、同時に食事中のシュウ酸を相応に減らす必要がある。
■ ナトリウム
・ ナトリウムを軽度に制限することが推奨される。ナトリウムの多い市販の犬用トリーツは避けること。
■ アスコルビン酸
・ シュウ酸カルシウムの前駆体であるアスコルビン酸の過剰投与も避けるべきである。
■ ビタミンB 6
・ 犬のシュウ酸カルシウム尿石とビタミンB 6の関係は明らかではないが、ビタミンB 6が欠乏した食事を給与された仔猫で、高シュウ酸尿症が起きた。ビタミンB 6の欠乏も避けるべきである。
■ ビタミンD
・ 過剰なビタミンDは、カルシウムの消化管吸収を促進するので避けるべきである。
■ マグネシウム
・ 猫と反芻動物では、食事にマグネシウムを補給すると、ストルバイト尿石を形成しやすくなるが、明らかにシュウ酸マグネシウム尿石結晶の形成を妨げる。
・ 正常犬において、マグネシウムを補給すると、尿中カルシウム濃度が高くなったという実験がある。
・ さらなる研究が進むまでは、犬のシュウ酸カルシウムの治療に食事中のマグネシウムの制限・補給は薦められない。
・ 理想的には、食事中リンとマグネシウムは制限も補充もしない方がよい。
■ 低クエン酸尿
・ 持続性の酸性尿または低クエン酸尿が認められる場合は、クエン酸カリウムの投与を推奨している。ただし、クエン酸カリウムが含まれている療法食の場合には、補給の必要はない。
■ 推奨レベル
【水】
尿比重を1.020以下にするために、水の摂取を奨励
【たんぱく質】
過剰なたんぱく質の摂取を避ける。10〜18%
【カルシウム】
過剰なカルシウムの摂取を避ける。0.3〜0.6%
【ナトリウム】
過剰なナトリウムの摂取を避ける。0.3%以下
【マグネシウム】
マグネシウムの過剰摂取や欠乏を避ける。0.04〜0.15%
【シュウ酸】
シュウ酸が多い食事を避ける。
【ビタミンD】
過剰なビタミンDの摂取を避ける。500〜1500IU/kg(乾物量)
ビタミンDを含むサプリメントを避ける。
【ピリドキシン(ビタミンB6)】
ピリドキシン欠乏を避ける。1.0mg/kg(乾物量)以上
【アスコルビン酸(ビタミンC)】
アスコルビン酸を含むペットフード、サプリメント、ヒトの食事を避ける。
%は、すべて乾燥重量あたりです。
■ この数値を参考にレシピを作りたい場合は、「レシピ作成」シートの「疾患別推奨レベル」の枠内に下の図のように入力します。「%」は入力しなくても、数字を入力すれば出てきます。
これ以外の栄養素については、他の基準を参考にすることになると思います。