「小動物の臨床栄養学」より
■ 脂肪酸
・ 食事にn-3 脂肪酸を添加すると、おそらく腎機能が改善する。
・ 実験的慢性腎不全の犬に、魚油、牛脂、サフラワー油を与えた研究では、サフラワー油を与えた犬で最も死亡率が高かった。
・ 慢性腎不全の犬猫に対する最適な脂肪酸濃度と脂肪酸組成はわかっていないが、現在入手できるデータによれば、n-6:n-3=2.5:1未満が妥当なようである。
■ 新鮮な水
・ 尿の濃縮は腎障害を起こすおそれがある。新鮮な水をいつも飲めるようにしておくこと。
■ リン
・ 実験的慢性腎不全の猫の研究では、高リン食群では組織学的異常が認められたが、低リン食群では認められなかった。進行性の腎機能障害は、どちらも検出されなかった。
■ たんぱく質
・ 食事中たん白の制限が、ヒトの腎疾患では有益であるとするデータがある。
・ 猫では、たん白質の制限が腎機能障害の進行を抑制すると考えられる。
・ 腎疾患が自然発生した猫の研究で、高たん白食群では血清クレアチニン濃度が徐々に増加し、たん白制限群では徐々に低下した。
・ 低たん白の食事を与える栄養学的な目的は、尿毒症の症状を軽減することである。
・ 高い生物価のたんぱく質28〜30%(乾物あたり)から19〜21%のカロリーを供給する。(犬猫では、たんぱく質1g=3.5kcal)
■ アミノ酸
・ リジンは一般的な犬・猫用の食事の制限アミノ酸であるが、経験的にトリプトファンがリジンより制限アミノ酸である確立が高い。
・ 理想たん白という意味では、トリプトファンの要求量を満たしている食事が、すべての必須アミノ酸の要求量を満たしている食事といえる。
@はなから
理想たん白=生物価の高いたんぱく質=アミノ酸を過不足なく含んでいるたんぱく質
過不足なくというのは全部が同じ量という意味ではなく、アミノ酸のバランスが良いという意味です。バランスが悪いと、余ったアミノ酸は腎臓で尿素に変えられて排泄されます。
そのバランスを考えた場合、「トリプトファンが満たされていれば必須アミノ酸のバランスは摂れていると考えてもよい」と言っているわけです。
■ カリウム
・ 低カリウム血症、高カリウム血症は、どちらも起きる可能性がある。血清カリウム濃度を調べて対応すること。
■ 酸負荷
・ 食事中の酸は、含硫アミノ酸(メチオニンとシスチン)、リン酸、塩酸などである。
・ 動物性たん白は、植物性たん白よりも含硫アミノ酸が多い。
・ 食事中のリン酸塩が酸の酸性に関わるかどうかは、たんぱく質の種類による。
・ 塩酸はリジンやアルギニンなど陽イオンアミノ酸が分解される時に産生される。
・ 過剰な食事中たん白を避け、たんぱく質以外からエネルギーを摂取すれば、酸負荷を抑えるのに役立つ。
■ ナトリウムと高血圧
・ 腎不全の患者は、著しく高いナトリウム摂取量や低い摂取量に耐えられない。
・ 腎疾患から高血圧が起こる場合と、放置された高血圧から腎臓が障害をうける場合がある。
・ 感受性の高い実験動物では、アルギニンを投与すると高血圧の発症を予防できるが、正確なデータが入手できないため、腎不全患者に対する日常的なアルギニンの推奨量が決められるまでには至っていない。
■ ビタミンA
・ ビタミンA過剰症はヒトの腎不全患者でよく見られるが、犬・猫については正確なデータがないので、ビタミンAの推奨量は提示できない。
■ ビタミンD
・ 腎不全が重度な動物では腎臓での合成が低下するので、1,25ジヒドロキシビタミンD濃度が低下している。
@はなから
摂取したビタミンD2,D3が肝臓、腎臓で変化して活性型ビタミンD(1,25ジヒドロキシビタミンD)になる。ビタミンDは過剰症もコワイので、過不足なく摂取していればいいんでしょうか。
■ ビタミンB
・ 腎不全の動物は食欲が減退し、嘔吐、下痢、多尿などもあるため、ビタミンB群が欠乏しがちである。
・ ヒトの腎不全患者は特にピリドキシン(B6)と葉酸の欠乏症に陥りやすいことがわかっている。
・ 腎不全では、チアミン(B1)とナイアシンの欠乏から食欲不振が起こる可能性もある。
@はなから
ビタミンB群は単独で与えず、コンプレックスの形で与えること とピトケアンさんは書いてました。
■ 微量ミネラル
・ たん白尿が著しい場合には、たんぱく質を強く結合している銅や亜鉛などは、喪失される。
・ 正確なデータがないので、微量ミネラルの日常的な推奨量を提示できない。
@はなから
正確なデータがなく推奨量がわからないものについては、NRC・AAFCO基準の推奨量はきちんと摂取することでしょうか。
■ 可溶性繊維
・ 可溶性繊維は、尿素の糞便中排泄を増加させ、血清尿素窒素濃度(BUN)を低下させ、尿からの尿素排泄を減少させる効果がある。
■ 推奨レベル
【水】
常に十分な水を飲めるようにしておく。
脱水、血液減少症、腎血流低下が重度であれば、非経口輸液を行う。
【エネルギー】
非たん白カロリーの形で十分なエネルギーを摂取させる。
【たんぱく質】
たんぱく質の過剰摂取を避ける。30%以下
【ナトリウム】
ナトリウムの過剰摂取を避ける。0.35%以下
【リン】
リンの過剰摂取を避ける。0.4〜0.6%
【酸負荷】
酸の過剰摂取を避ける。
【カリウム】
≪低カリウム血症(特に猫)≫
→ 経口的なカリウムの補給。カリウム濃度の高い食事に変更。
≪高カリウム血症≫
→ カリウムの補給を中止。
カリウム保持性利尿薬から、ループ利尿薬またはサイアザイド系利尿薬に変える。
カリウム濃度の低い食事に変更。
%は、すべて乾燥重量あたりです。
■ この数値を参考にレシピを作りたい場合は、「レシピ作成」シートの「疾患別推奨レベル」の枠内に下の図のように入力します。「%」は入力しなくても、数字を入力すれば出てきます。
これ以外の栄養素については、他の基準を参考にすることになると思います。
また、人間の話ですが、腎疾患のある場合は、ビタミンCの大量摂取は避けた方がよいそうです。